即ち、欧州共同体商標意匠庁(OHIM)やニース協定による小売業商標のサービスマークとしての保護という国際的動向を契機として、平成19年4月1日施行の改正商標法(意匠等の一部を改正する法律:平成18年法律第55号)が成立し、小売又は卸売に伴って顧客に提供される総合的なサービス活動であって、最終的に商品の販売により収益をあげるものを小売サービスと位置づけ、これを「小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」として商標法上の役務とみなし、役務商標)として登録できるようにした(改正商標法第2条第2項)。
(1)小売等役務とその要素である個々のサービス活動
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商品の小売又は卸売において小売業者又は卸売業者が顧客に対して行う個々のサービス活動が小売等役務の構成要素と考えられるが、代表的なものは以下のとおりである。
尚、商品の販売自体は商品商標の使用となるため小売等役務には含まれない。 |
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A. 商品の品揃え
B. 商品の陳列 |
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商品の陳列には、店舗内における顧客の視線を考慮した上で、工夫された売り場の配置により顧客の商品選択の便宜を図る場合なども含まれる。 |
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C. 接客サービス(商品購入の際の商品の説明・助言など)
D. ショッピングカート・買い物かごの提供
E. 商品の試用(例えば、試着室の提供、電気製品の試用の場の提供など)
F. 商品の包装・紙袋・レジ袋の提供
G. 通信販売においては、次の(@)、(A)のようなものが挙げられる。 |
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(@) |
通信販売(郵便や電話を利用する形態のもの)においては、顧客の商品選択の便宜のために、販売する商品のレイアウトを工夫したカタログの提供
例えば、ファッション関連の商品の通信販売カタログ上の品揃えでは、TPOに応じた衣服、かばん、靴、装身具などをトータルコーディネイトしたときの状態を顧客が視認できるような商品の掲載方法を工夫したカタログにより商品の選択の便宜を図ること |
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(A) |
インターネットサイトを通じた通信販売においては、(@)のような商品の選択の工夫を顧客がインターネットに接続して、端末画面上で視認できるようなサイトを作成して商品の選択の便宜を図ること
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A |
改正商標法では、小売業者等の提供する総合的なサービス活動全体を一括りにして一つの小売等役務として保護する。そのため、その総合的なサービス活動の要素である上記のような個々のサービス活動を個別に商標法上の役務として取り扱うものではない。具体的には施行規則別表第35類の例示にあるように例えば「○○○の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(○○○の部分は、その小売等役務で取り扱う商品を表示)のように役務を指定することとなる。
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(2)商品商標と小売等役務の商標との関係
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商品に係る商標と小売等役務に係る商標は、商品の出所を表示するのか役務の出所を表示するのかという点において概念上の切り分けがなされる。
例えば、店員の制服や陳列棚などに表示される商標は小売等役務の出所を表示するものと解されるが、プライベートブランドに表示される商標などのように商品と密接な関連性を有する商標は商品の出所を表示するものと考えられる。
尚、商品の値札のシール、包装紙、レジ袋、ショッピングカート等に付された商標については、表示態様及び使用の実情等(特定の商品専用の包装でなく汎用されているものであること)を勘案すると、小売等役務の出所を表示し、小売等役務の商標の使用と考えられる。
又、広告チラシにおける商標の使用でも、対象商品の写真と価格の表示付近に表示されたものは、商品商標の使用とされ、広告チラシの隅(枠外)に表示されたものは、小売等役務の商標の使用とされるものと考えられる。
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(3)審査の運用
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出願された小売等の商標は、単一の区分(第35類)で保護されることになるが、小売等役務の商標と相互に先後願を審査される。
第9版対応の類似商品・役務審査基準において同一の類似群コードを付与された役務同士は類似するものとして審査される。
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A |
出願された小売等の商標は、商品の商標と相互に先後願を審査される(クロスサーチ)。
同基準において小売等役務について付与された商品の類似群コードと同一の類似群コードを付与された商品とは類似するものとして審査される。
尚、いわゆる総合小売(「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売及又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」として指定される百貨店、総合スーパー等の役務)については、商品の商標とクロスサーチはされない。 |
(1)施行期日
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平成19年4月1日より施行
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(2)改正法適用に係る経過措置(附則第5条関係)
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小売商標等の保護に関する改正法は、施行日以後にした出願から適用され、施行日前にした出願については改正前の法が適用される。
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(3)継続的使用権(附則第6条関係)
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改正法施行前から日本国内で不正競争の目的でなく小売等役務に使用されている商標は、他人が同一又は類似の小売等役務を指定役務とする同一又は類似の商標について商標権を取得した場合でも、施行の際にその業務を行っている範囲内において、本改正法施行後も継続してその商標の使用をできる権利(継続的使用権)が認められる(附則第6条第1項)。
但し、施行の際にその商標が需要者の間に広く認識されている場合は、施行の際に行っている業務の範囲に限定されることなく、例えば、施行後に営業地域を拡大して当該商標を使用することができる(附則第6条第3項)。
商標権者又は専用使用権者による商標権の行使が制限されるため、それに代わる措置として、継続的使用権者の業務に係る役務と自己の業務に係る役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求できることとした(附則第6条第2項及び第4項)。
「混同を防ぐのに適当な表示」については、商標の態様の変更を意図するものではなく、例えば、自己の商号や営業地などを併記して需要者の注意を促すことなどが考えられる。
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(4)施行後3ヵ月間(4月1日〜6月30日、以下「特例期間」という)にした商標登録出願の特例
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施行日当日に出願が集中することによる出願人及び特許庁の事務負担を軽減する必要から、特例期間にされた商標登録出願(以下「特例小売商標登録出願」という)同士については、同日に出願されたものとみなして、商標法第8条第2項(協議又はくじによる措置)を適用する(附則第7条第4項)。
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A |
但し、商品に係る商標登録出願や小売等役務以外の役務に係る商標登録出願については実際の出願日を基準として先後願関係が審査される。
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(5)使用に基づく特例の適用
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@ |
本改正法施行前から使用されている小売等役務に係る商標については、附則第6条の継続的使用権により保護されるが、それにより蓄積された業務上の信用や既存の取引秩序を維持するためには、出願人の協議又は特許庁長官による公正なくじといった措置以外にも特段の配慮が必要となる。
そこで、特例小売商標登録出願同士が競合する場合、本改正法施行前から日本国内で不正競争の目的でなく自己の業務に係る小売等役務について商標が使用されていた旨の使用に基づく特例が主張された商標登録出願(以下「使用特例商標登録出願」という)が、特例の適用がない出願に優先して商標登録を受けることができることとした(附則第8条)。
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A |
使用特例商標登録出願が複数ある場合は、他人の周知・著名商標と抵触しない等の他の登録要件を満たせば、双方とも登録される(重複登録)。
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B |
使用に基づく特例の主張は、出願前に行う必要性はなく、実際に他人の出願との競合が問題となり、協議命令(商標法第8条第4項)がなされた場合にはじめて行うこととなる。
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C |
使用特例商標登録出願の審査
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同一又は類似の関係にある周知な使用特例商標登録出願が複数併存している場合には商標法第4条第1項第10号の規定により双方とも商標登録を受けることができないおそれがあるため、これらについては、同号の適用を除外し、同一又は類似の関係にある周知商標同士についても重複登録を可能にすることとした(附則第8条第3項)。
但し、自己の業務に係る小売等役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標については、商標法第4条第1項第10号は適用されなくても、同15号の適用はあり得る。
以上のことから、複数の特例小売商標登録出願については、使用特例商標登録出願を未使用の特例小売商標登録出願に優先して登録し、また、使用特例商標登録出願が複数あるときは、それらの使用特例商標登録出願が重複して商標登録を受け得ることとした(附則第8条第4項)。
実質上、優先・重複登録される使用特例商標登録出願は、概ね次のとおりとなる。
(特許庁ホームページより)
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D |
重複登録に伴う調整措置
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特例小売商標登録出願について重複登録された当事者間で問題を生じた場合には、類似の登録商標の分離移転に伴う調整措置である商標法第24条の4(混同防止表示請求)及び第52条の2(取消審判)の規定を準用することとした(附則第8条第5項)。 |